最近ワインショップやレストランで食事をする際に「オーガニックワイン」や「ナチュラルワイン」を見かけることが多くなりました。
以前はこれらのワインはひとくくりに無農薬だと思い込んでいた私。
実は環境や経済への配慮や、哲学に基づいていて作られていたりとさまざまな背景があるのはご存知でしたか?
今日はワインにはどのような農法があるのか、解説していきます。
従来のブドウ栽培
ひと昔は生産性の向上や、労働要件の削減を目的とし、最小限のコストで大量にワインを作るワイン作りが行われていました。そのため、機械化や農薬・化学肥料の使用、灌漑、クローン選択などさまざまな選択が取られていたのです。
従来のワイン農法において大きなポイントとなるのが、農薬や化学肥料(Mineral Fertile)の使用です。これらを使うことにより、土壌の微生物や雑草を排除することができ、効率よくぶどう栽培ができると考えられていました。しかし一方で、農薬で微生物や雑草を排除すると、ぶどうが栄養素を補給するための自然の生態系がなくなってしまい、土壌の栄養分が枯渇してしまいます。また、一度真菌性(fungal desease)の病気にかかってしまうと、一気に病気が広まってしまうというリスクも懸念されました。さらに、環境・健康へのリスクもあるという考え方から自然や健康に配慮したワインを作ろうという動きが進んでいき、新たな農法として出てきたのがサステイナブル農法、オーガニック農法、そしてビオディナミ農法です。
サステイナブル農法
サステイナブルという言葉は、日本でもこの数年でかなり浸透してきました。日本語に訳すと「持続可能な」という意味です。
ワイン農法においてサステイナブルは、「経済的、環境的、社会的な部分を環境への影響」を減らすこと。化学肥料や農薬、除草剤を絶対使わないという厳格なものではないですが、できる限り使わずにワインを作りましょうという取り組みです。
じゃあどうやって出来る限り使わないようにするかというと、天気予報の観察です。ぶどうの木の成長サイクルや季節ごとに起こりうるリスク(真菌性の病気のリスクなど)を天気予報を見て予め予測し、やみくもに使うのではなく予防しながらワインを作ります。
ちなみにサステイナブル農法には明確な作り方に対する基準がありません。なので、プロモーションの観点から考えると、生産者は明確な理由なしにサステイナブル農法で作ったワインと謳うことが出来てしまう可能性があります。
オーガニック農法
オーガニック農法では、ぶどう畑の土壌と土壌の中に生息する微生物などを改善し、ぶどうの健康や耐病性を高めることを目指しています。基本的に製造された肥料や除草剤の使用はNGです。使用が許可されているのは、非常に限られた数のものだけで、使用もごく少量しか認められていません(具体的には硫黄などを使ってカビを防ぐ等)。
カリフォルニアやEUではこのオーガニック農法に関してすでに法制化されていて、過去20年間で大幅に増加しています。実際に2017年には世界の5.4%がオーガニック認定を受けています(ちなみに世界で作られる84%のオーガニックワインはヨーロッパで作られているくらい、ヨーロッパでは取り組みが先行しています)。
ビオディナミ農法
ビオディナミ農法はルドルフ・シュタイナーとマリア・テゥーンによって提唱されました。ビオディナミ農法はオーガニック農法を採用しているため、除草剤や化学肥料の使用は禁止されていますが、オーガニック農法との大きな違いは、哲学や宇宙論を取り入れているところにあります。
ビオディナミ農法では、ぶどう畑の土壌は地球や他の惑星と連続する形態の一部とみなすと考えます。そのため、月や星のサイクルに合わせて種まきや苗植え、収穫などをおこないます。
また、害虫を防ぐ調合剤には「プリパレーション」と言われる9種類の調合剤が用いられます。なんと、プリパレーションでは牛の角や糞を使うんです!(ビックリですよね!)
Preparation 500:牛の糞を牛の角に詰める
Preparation 501:牛の角にすり潰したシリカを入れて半年間埋める
Compost(堆肥):カモミールやノコギリソウの花
日本でも有名なロマネ・コンティやルロワ、ニコラジョリーもビオディナミ農法を採用していることをご存知でしたか?
さすがにロマネ・コンティは手が出ませんが、手の届くワインで作り方別に飲み比べをしてみるのも面白いかもしれませんね!
これらの内容は、こちらのワイン学入門でも詳しく解説されています。