ワイン資格といえば、日本では圧倒的に「ソムリエ」や「ワインエキスパート」が有名ですよね。
でも、実は今WSETというワイン資格が日本で人気が急上昇しているんです。
私は2020年にWSETのLevel3に合格し、現在Diplomaを受験中です。
数年前までは「WSET」と言っても何の資格?とまず聞かれるほど全く有名ではありませんでした。
しかし、最近はワインエキスパートやソムリエの資格を取得した方が次の資格としてWSETを受験されるとよく聞きます。
この記事では、私が実際に周りからよく聞かれるこれらの質問、
- 「どんな資格なの?」
- 「ソムリエと何が違うの?」
- 「どれくらい難しいの?」
について、まとめました。
WSETの概要とレベル、私自身が受験を経て感じたメリットについて解説していますので、ぜひ参考にしてみてくださいね!
WSETは世界最大のワイン教育機関
WSETは、Wine & Spirit Education Trustの略で、ロンドンに本部を置く国際的な酒類教育機関です。
実は、ワインだけでなく、日本酒とスピリッツの資格もあり、日本酒の資格も日本人の受験生も増えてきているようです。
ワインの場合は、Levelが4段階に分かれており、講座・試験は世界70カ国、700の認定校、15以上の言語で実施されています。
日本で受験ができるようになった当時はすべて英語受験のみでしたが、最近はLevel1から3については日本語で受けられるようになりました。
これが日本人受験者の増加の一つと言われているようです。
ただし、Level4は今現在英語でしか受験することができません。
ソムリエ試験との違い
日本ではワインの資格といえばまだまだ「ソムリエ」が思い浮かぶ人がほとんどだと思います。
実際に私もWSETという国際的なワインの資格と説明しても「ソムリエ持っているんだよね!」と言われることが多いんです。
ソムリエ試験との違いその1:「暗記」か「考える」か
ソムリエとWSETの大きな違いを一言でいうのであれば、「暗記して覚える」か、「論理的に考えて覚える」のかだと思います。
ソムリエはどちらかというと接客業をする上で必要な知識を重視しているのに対し、WSETはワインの流通関係者が知っておくべき知識も重視しています。
例えば、ソムリエがレストランでお客様から「この料理に合うフランスワインのオススメは何ですか?」と聞かれたとします。
その場合、ソムリエはフランスのどの地域でどんなワイン(赤なのか、白なのか)が造られ、どんな味わいなのかといった細かなことまで知っておかなければなりません。
一方、WSETの場合は、もちろんそういった知識も必要なのですが、なぜこの地域のワインは良質なワインが造られるのか、なぜデイリーワインは大量生産することができるのかといったことを気候、日照量、環境などの観点から掘り下げて考えていきます。
ソムリエの試験と比べ、生産者、ワインの仕入れや販売をする人がより重視するような知識が求められます。
また、ソムリエ試験は選択式の質問が中心なのに対して、WSETは筆記が中心です。
つまり、理解していないと合格できません。
WSETが難しいと言われる理由の一つはこの試験スタイルの違いにあると思います。
ソムリエ試験との違いその2:ソムリエは3次試験まで、WSETは同日に筆記とテイスティング試験がある
ソムリエ試験の場合は、3次試験まであるのに対し、WSETの受験は一日のみです。
(WSET Diplomaは例外で、6つの科目をそれぞれ受験するスタイルです。難関と言われる世界のワイン(D3)については筆記とテイスティングがそれぞれ1日ずつ計2日間行われます。)
また、ソムリエの場合は条件とされている職務を通算3年以上経験し、第一次試験日においても従事している方が対象となりますが、WSETはそういった職務経験がない人でも受けることができます。
ソムリエ試験では一次が筆記試験で、筆記試験に合格した人だけが2次のテイスティング試験の受験資格が与えられます。
その後3次試験の実技も合格し、初めてソムリエになれる、非常にレベルの高い試験です。
一方のWSETは一日に実技と筆記試験両方行い、テイスティング試験と筆記試験それぞれで合格する必要があります。
最低合格点数は55%以上で、合格のレベルも正解率によってMerit、Pass with merit、Pass with distingtionという3段階に分けられます。
余談ですが、WSET試験では、Level3の場合テイスティング試験が先に行われます。
しかも試験中にワインが足りなくなったら追加してもらえるんです!!WSETの試験ワインって結構お値段の良いワインが出たりするので、私も当日楽しみにしてたんですが、テイスティングしていたら途中で自分のテイスティングが心配になってしまい、結局赤白2杯ずつ飲んでしまいました(笑)
ソムリエ試験との違いその3:テイスティング手法の違い
ソムリエ、WSETどちらも外観、香り、味わい、品質評価といった観点でワインをテイスティングする部分は同じです。
WSETの場合はWSETが独自に開発したテイスティング・メソッド”SAT”(Systematic Approach to Tasting)を基にワインを評価し、レベルが上がるに連れて分析項目がより細かくなります。
SATについてはWSET Diplomaのテイスティングで詳しく解説しています。
WSETの難易度は4段階?
さて、WSETのレベルですが、難易度は4つに分かれています。レベルが上がるにつれ学ぶ内容が広く難しくなっていきます。
WSET Level1
Level1はワイン初心者向けの試験で、主なワインのタイプやスタイル、有名なブドウ品種と特徴、料理との合わせ方などを学びます(テイスティングあり)。最低6時間の講座受講が必要ですが、一日で受講と試験を受けられる高座もあるようです。
WSET Level2
初心者から中級者向け。ワインに加えてスピリッツが範囲に入っています。
具体的な学ぶ内容は、赤ワイン・白ワインの造り方、どんな要素がワインのスタイルに影響を与えるか、ぶどう品種とその特徴や産地、スパークリングワイン、甘口ワイン、酒精強化ワインの造り方などです。
試験は選択式の筆記試験のみ、テイスティング試験はありません。
WSET Level3
中級から上級者向け。ワイン生産において重要となる要素(環境、ブドウ栽培(剪定の仕方)、醸造、熟成(ステンレスタンク/樽熟成))や、これらの要素が世界中で造られるワインの個性にどのような影響(値段、味わい、品質)を与えているかを学びます。
試験は選択式と記述式の筆記試験に加えてテイスティング試験があります。
Level2と3どちらからスタートするか悩まれる方も多いのですが、私の周りではワインスクールに行っている人、多少の知識がある人はLevel2、ソムリエやエキスパートの資格を持っている人はLevel3からスタートする人が多かったです。
私もLevel2から受験しました。Level2から学ぶメリットとしては2つあり、一つはWSETの試験の特徴が分かること。
過去問が一切ないので、Level2の筆記試験を受けておくと選択式についてはこんな感じの質問が出るんだな、どういう要素をWSETが重視していて、どんな問題が出やすいといった傾向がわかります。
もう一つは、Level3を勉強する上でLevel2の知識が前提に必要となることです。
特にぶどうごとの風味や特徴、生産されている地域をLevel2のテキストで振り返ることが多く、かなり役立ちました。
Level2のテキストはLevel3のテキストに比べて厚さは1/3ほどしかないものの、必要最低限に内容がまとまっているので重宝します。
WSET Level4
上級者向けのLevel4は別名Diplomaとも呼ばれていて、非常に難易度の高い資格です。最近では日本人の受験生が増え、合格者は100名を超えました(それでもこの程度です。)
Diplomaは下記の5つのUnit+レポートを2年間で学ぶプログラムです。
日本で申し込みを行い、受験することができますが、試験自体は英語でしか受けることができません。
①ワイン生産(ブドウ栽培、醸造)
②マーケティング
③世界のスティル・ワイン
④スパークリングワイン
⑤酒精強化ワイン
+レポート提出
WSETを受験できるワインスクールは現在4校
WSETは認定校での講座を受講することが受験資格の条件になっています。
現在日本で認定校になっているのは、アカデミー・デュ・ヴァン、キャプラン、わだえみのわいん塾、レコール・デュ・ヴァンの4校。
私のおすすめは、やはりアカデミー・デュ・ヴァンです。
アカデミーデュヴァンはこの数年講座数も増えて、かなり力を入れているのが分かります。
WSETを取るための勉強方法
WSETは過去問がありません。
Level2は選択式の問題でテイスティング試験はないので、比較的簡単でしたがLEVEL3については筆記試験が最大の難関でした。
私が実際に試して効果を感じた勉強方法についてはこちらをご参考ください。
また、WSETを勉強しはじめてから、ワインを学ぶことが楽しくなり、参考書も数多く読みました。
実際に受験対策として役立つ参考書もこちらで紹介しています。
WSETの資格を取って良かったこと
国際資格ということもあり、世界での知名度が非常に高いWSET。
実際に昨年フランスのワイナリーを巡った時にも、生産者との会話の中で「WSETを勉強している」と伝えたところ「どのレベルを勉強しているの?」「Level3勉強しているなんて本格的だね!」と会話が弾み、質問に対しても非常に細かい部分まで説明してもらうことができました。
実際に、醸造過程や気候の話を聞いていても授業で習ったことが頭に入っていると理解力が全然違います。
海外だと通用する資格なんだなとこの時改めて実感しました。
また、なぜワインの醸造からマーケティングまでを幅広く学ぶことで、なぜこのワインはこういう味わいになるのかということを根本的に理解することができ、より深くワインを楽しむことができるようになりました。
奥深すぎてまだまだ覚えることは山ほどあります。
WSETまとめ:論理的にワインを学びたい人におすすめ
以上、WSETの資格と難易度についてご紹介しました。
「何故」からワインを紐解いてみたいという方には、WSETはおすすめですし、よりワインの奥深さについて知ることができると思います。
各スクールで無料体験も実施しているので、迷っている方は話を聞いてみるのもおすすめですよ!