スモークテイント(煙汚染)って何?ワインに与える影響についても解説

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昨今、オーストラリアやカリフォルニアで深刻な被害になっているのが山火事。これらの地域はワイナリーが多くある地域でもあり、ワイン生産においても深刻な被害となっています。

オーストラリアが実施した調査によると、山火事が増えている背景には気温の上昇や、それによる湿度の低下(乾燥)、降雨量の低下といった条件が影響していると指摘しています。これらの条件が「高温・乾燥」になり、山火事のリスクにつながっています。オーストラリアやカリフォルニアでワインを生産する人たちにとっては、まさに脅威の一つなのです。

目次

スモークテイントとは

ワインを作る上でなぜ山火事は問題になるのか。その一つがスモーク・テイントです。スモークテイントとは煙によるワイン汚染のこと。ワイン業界では2003年に初めてスモーク・テイントが問題となりました。きっかけはオーストラリアで発生したキャンベラの山火事で、ビクトリア州北東部とニュー・サウス・ウェールズ州南東部のブドウ園に煙害をもたらしました。
スモーク・テイントにさらされたワインは、灰、燻した肉、皮、ベーコン、ビニールなどのオフ・フレーバーを放ちます。これが、ワインの品質や生産量に大きな影響を及ぼすリスク要素となっています。

スモークテイントはどのように起きるの?

では、スモーク・テイントはどのようにして起こるのでしょう?

スモーク・テイントのリスクは、新鮮で重い煙にぶどうが継続的にさらされたりすることで高まります。

煙に含まれるフェノール性成分がブドウの表皮に付着する

木が燃えると、揮発性のフェノール性成分(主にグアイアコール(正露丸の香り)、4-メチルグアイアコール)が発生し、それらが灰とともにブドウの表皮に付着します。

付着したフェノール性成分はブドウの糖分と結合してグリコシドとなる

その後、ぶどうの当分と結びついてグリコシドを生みます。ここでポイントなのが、フェノール性成分が糖とくっつくと、無臭になるのでどれくらい香りが出てしまうのか分からないという点です。また、ブドウ表皮に付着したフェノール性成分は、ブドウの皮から中に入り込むため、果皮も一緒に発酵する赤ワインにおいて特に影響が出やすいと言われています。

ワインの発酵過程で、グリコシド結合が分解され、再び揮発性フェノール性成分が放出

その後、ワインの発酵過程で生じる酸などにより、グリコシド結合が分解されます。それによって隠れていたフェノール性成分が表れ、スモークテイント独特の香味が放出されます。生産者によると、実際に発酵をさせてみないとスモークテイントがどれくらいひどいのか分からないという部分があるそうです。また、研究でも様々なワイン醸造技術によってスモーク・テイントに関連するアロマを「隠す」ことはできても、スモーク・テイントの特徴である鼻につく灰のような特徴を完全には隠せないことがわかっています。

グアイアコールの成分はどれくらいだと影響あるの?

ワイン買いたい新書のYoutubeの中で解説されているアキコフリーマンさんによると、グアイアコール1ppb(10億分の1)以上だと人間がスモーキーな香りを感じ、この数値は上がれば上がるほどより香りが鮮明になります。ちなみにカリフォルニアでは、保険に入っている生産者であればぶどうからグアイアコール1ppb以上の数値が確認できれば保険が下りるとのこと。生産者さんならではのお話で非常に興味深いです。

https://www.youtube.com/watch?v=-3B9gQxUikM&t=311s

対処方法

では、スモーク・テイントからぶどうを守るにはどうしたら良いでしょうか?いくつかオプションを見ていきましょう!

分析的な検査もしくはマイクロヴィニフィケーションを実施

マイクロヴィニフィケーションとは、小さな樽を使用して少量ずつ発酵させる方法です。これにより、どの程度スモークテイントが深刻なのか確認することができ、必要な措置を行うことができます。

醸造オプション

スモークアロマの要因となるフェノール性成分は、ブドウの皮の内側に存在すると考えられています。そのため、手作業による収穫、全房圧搾、低温発酵などによりマセラシオンの時間を短くすることで化合物を減らすことができます。

フラッシュデタント

フラッシュデタントとは発酵前の抽出の方法の1つで、除梗したブドウを素早くに熱し(85-90°C)、真空下で約2分ほど素早く冷やします。これによりマセラシオンによる色素や風味成分の抽出を高める方法です。赤ワインを造るときに用いられるオプションですが、この方法でも完全にアロマを取り除くことはできません。

山火事に対応する生産者の取り組み

さて、こういった山火事に対応するためにカリフォルニアの一部のワイナリーでは、「カーボンファーミング」と呼ばれる農法に取り組んでいます 。これは、ブドウ畑を堆肥で覆い、大気中の二酸化炭素(CO2)を土壌に取り込むことで、地球温暖化の抑制に貢献する農法です。この取り組みは、過去2年間でナパ・バレーの70のワイナリーに広がっており、最も楽観的な予測では、このカーボンファーミングが世界規模で実施された場合、世界の年間CO2排出量の100%を回収・貯留でき、今世紀中に気温を0.1〜0.3度下げることができると言われています。

世界的にも有名な産地の山火事が少しでも減ることを祈ります。

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この記事を書いた人

WSET Level2,3取得|WSET Diploma勉強中|一児の母、夫婦で1日ボトル2本は空けるほどワイン好き|年間300日以上飲んでます|毎日の食卓と時間がより楽しく豊かになるようなワインと、WSETやソムリエ試験で使えるネタを紹介しています。

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