この数年日本語で受験が可能になったことで受験者が増加しているワイン資格がWSETです。
一方で、ソムリエやワインエキスパートと試験の出題形式が違ったり、過去問がなかったりと、試験に向けた勉強法に悩まれる方も多いです。
そこで、本記事では、1発で合格できたWSET Level3の勉強法について紹介します。
WSETとは
WSETとはWine & Spirit Education Trust(ワインとスピリッツの教育企業合同)の略で、イギリス・ロンドンに本部を置く国際的な酒類教育機関です。
Levelが4段階に分かれており、講座・試験は世界70カ国、700の認定校、15以上の言語で実施されています。
日本では、Level1から3までは日本語で受けられるようになりました。
Level4はDiplomaと呼ばれており、専門レベルと言われるほど取得が難しいと言われています。
Level4は今現在英語でしか受験することができません。
WSET Level3取得にはスクールに通うことが必要
WSET Level3は、ソムリエ・ワインエキスパートと同レベルと言われています。
そのような理由もあってか(日本語受験も可能になったことも大きいですが)ソムリエ・ワインエキスパートの次のワイン試験としてWSETを受験される方も多いです。
WSET Level3を受験するには、認定校での講座を受講することが受験資格の条件になっています。
現在日本で認定校になっているのは、下記の4校。
WSET Level3のカリキュラムの内容
Level3のカリキュラムは、世界の主要なスティルワイン、スパークリングワイン、酒精強ワインのスタイル、品質、価格に関わる要因についての深い知識を身につけることができるように構成されています。
講座受講後には、世界の主要なワインの特徴やスタイル、品質、価格に影響を与える重要な要因について理解することができるようになります。
受講時にもらえるもの
初回のオリエンテーションで、以下の4点を受け取ります。
- テキスト
- Specification規定
- ワークブック
- WSETテイスティングシート
Specificationは、資格取得に際して何を理解したら良いのか書かれています。
実は、Level3のオリエンテーションで、Specificationは大事だから必ず読むようにと言われていました。
Specificationには、試験時の出題範囲や点数の配分、評価基準などどうしたら試験に合格できるかが書いてあります。
Specificatinoを読み込むことで、自主学習がグッとしやすくなるので、必ず目を通してください!
講座のスケジュール(アカデミー・デュ・ヴァンの場合)
アカデミー・デュ・ヴァンでは試験も含めて約半年間、下記のようなカリキュラムでした。
講座の内容 | |
第1回 | オリエンテーション/系統的テイスティング・アプローチ |
第2回 | ブドウ畑における自然要因と人的影響 |
第3回 | ワイナリーにおける人的影響 |
第4回 | アルザス地方、ドイツ、オーストリア、トカイ地方の白ワイン |
第5回 | ブルゴーニュ地方、ロワール川流域、ボルドー地方の白ワイン |
第6回 | ボルドー地方、フランス南西部、ロワール川流域の赤・ロゼワイン |
第7回 | ブルゴーニュ地方とボージョレ地方の赤ワイン、およびローヌ川流域北部の赤・白ワイン |
第回 | ローヌ川流域南部、フランス南部の赤・白・ロゼワイン、スペインの赤ワイン(パート1)およびスペインとポルトガルの白ワイン |
第9回 | スペイン北部の赤ワインおよびイタリア北部の赤・白ワイン |
第10回 | イタリア中央部・南部の赤・白ワイン、ポルトガルの赤ワインおよびギリシャの赤・白ワイン |
第11回 | ニュージーランド、アメリカ合衆国およびオーストラリアの上質赤ワイン |
第12回 | ニュージーランド、南アフリカ、オーストラリア、アメリカ合衆国およびカナダの上質白ワイン |
第13回 | オーストラリア、南アフリカ、アメリカ合衆国の地域特産種のワイン、アルゼンチンとチリの上質赤・白ワイン |
第14回 | 酒精強化ワイン |
第15回 | スパークリングワイン |
第16回 | 模擬試験(テイスティング、筆記試験(多肢選択式問題除く)) |
第17回 | 模擬試験解説 ※解説が終わり次第終了 |
第18回 | Level 3 資格認定試験 |
見て分かるように、1回の講座で学ぶ内容が結構てんこ盛りです。
かつ1回の授業は2時間なのでかなり、早いスピードで進みます。
私はLevel2から受講していますが、覚える量も範囲もかなり広がり、予習・復習が欠かせなくなりました。
資格の構成
WSET Level3では、理論とテイスティングで計6 つの学習要項が定められています。
この内容を理解することがLevel3では求められており、これに沿って試験問題が作成されます。
理論で理解する世界のワイン
- 学習要項 1 :世界の非発泡性ワインの生産に関わるブドウ畑とワイナリーにおける主な自然の要因ならび に人的要因を明確にして、そうした要因がワインのスタイル、品質、価格に及ぼしうる影響 について説明する。
- 学習要項2:世界の主要なワイン生産地域で産出される非発泡性ワインの特徴を明確にして描写し、 ブドウ畑、ワイナリー、法律面、商業面での重要な自然の要因ならびに人的要因がワインの スタイル、品質、価格に及ぼしうる影響について説明する。
- 学習要項3:世界の主要な発泡性ワインの特徴を明確にして描写し、ブドウ畑、ワイナリー、法律面、商 業面での重要な自然の要因ならびに人的要因がワインのスタイル、品質、価格に及ぼしう る影響について説明する。
- 学習要項4:世界の主要な酒精強化ワインの特徴を明確にして描写し、ブドウ畑、ワイナリー、法律面で の重要な自然の要因ならびに人的要因がワインのスタイル、品質、価格に及ぼしうる影響 について説明する。
- 学習要項5:ワインに関する情報とアドバイスを顧客ならびにスタッフに提供する能力を備えていることを 明確に示す。
ワインの分析的テイスティング
- 学習要項 1 :世界の主要な非発泡性ワインの重要な特徴を正確に描写し、その表現を使って、ワインの 品質と飲み頃を評価する。
WSET Level3の合格率
WSET Level3の試験問題は、知識を問う筆記試験とテイスティングの実技試験に分かれており、両方に合格して初めて資格認定となります。
どちらか片方が不合格だった場合は、不合格の試験だけを、次回以降に再受験することが可能です。
- 筆記試験:4択のマークシート方式の50問と、記述問題4問(配点各25点)で構成。試験時間は計120分。
- テイスティング試験:白ワインと赤ワインの2種類が出題。試験時間は 30 分。
細かな配点などは全てSpecificationに記載されています。
また、合否は正解率に応じて5段階で成績評価が決まります。
正答率 | |
Pass with distinction(合格(優)) | 正解率 85% 以上 |
Pass with merit(合格(良)) | 正解率 70%〜 84% |
Pass(合格) | 正解率 55%〜 69% |
Fail(不合格) | 正解率 45%〜 54% |
Fail unclassified(不合格(分類外)) | 正解率 44% 以下 |
アカデミーデュヴァンによると、レベル3の合格率は世界平均で約50%。
しかし、アカデミー・デュ・ヴァンの講座を通して受験した方は73%と平均以上の受験生が合格しているようです。
WSET Level3の試験勉強で実際にやったこと
Level3は記述とテイスティング試験の両方があるので、それぞれ対策を練る必要があります。
ここでは記述、テイスティング試験それぞれの勉強法を紹介します。
選択式問題はワークブックの練習問題をやった程度でほとんど対策していません
記述対策①教科書は最低5回読む
アカデミー・デュ・ヴァンでクラスを担当してくださっていた青山先生が繰り返し言われていたのが、「教科書を繰り返し読みなさい」というアドバイスでした。
読むと繰り返し説明されている内容やどういうことが試験に出そうなのか、傾向が分かるとのこと。
半信半疑で3,4回読んだところ、各章で気候、各品種が栽培されている地域、どんな環境で造られているのか(斜面なのか、平地なのか)など、共通して書かれていることに気づきました。(大事だからこそ繰り返される!)
テキストは最終的に30回ほど、ボロボロになるまで読み込みました。筆記用に買ったモレスキンのノートは一冊使い切りました。こんなに勉強が楽しいと感じたことは初めてで、大変だったけどWSETを受けて本当に良かったと心から思っています!
記述対策②ノートを整理する
次に、地域ごとにこれらの要点を文章で説明できるよう、ノートにまとめました。
当時の私は文章で各地域のぶどうの特性を分かりやすく書くことができなかったため、最初は教科書の丸写しから始めました。
正直、頭では理解しているのに、書こうと思うと筆が進みません。
試験前は、特に焦りを感じたことを今でも鮮明に覚えています。
「なんとなく」と「はっきり」理解する差って大きいと改めて思いました。
記述対策③自分で質問を作る
書くことに慣れ始めた段階で、自分で質問を作って答える作業を行いました。
質問の作成方法はこんな感じです。
- 各章で大体3-4問まず自分で質問を作ってみる
- 答えをノートに書く
- ノートに書いたら、教科書を見直し
- どれだけ教科書に基づいた答えを書けたのかを確認
そうすると、遅摘みワインには色んなスタイルの醸造工程があるんだ!とか、ピノ・ノワールはこういった特性があるから高温の地域だとジャミーな味になってしまうのだなとか、何となく問題傾向が分かってくるのでどんどん面白くなってきます。
これを最初から最後まで約1ヶ月ほど繰り返し行いました。
自作の問題は、
- 赤白泡の醸造工程を述べよ
- 甘口ワインはどんな環境で作られるのか、種類やスタイルについて説明せよ
- ロゼワインの醸造方法について述べよ
- 大量ワインと高級ワインではどんな味わい、価格、品質に違いがあるか説明せよ
- 品種の特徴
などSpecificationも参考にしながら作成しました。
品種の特徴については、Level2のテキストが意外にも役立ちました。
テイスティング対策①テイスティンググラスで数種類飲み比べをする
テイスティングは、WSETのテイスティングアプローチに沿って確実に書けるように、テイスティングシートを印刷して書く練習を行いました。
家でも毎日ワインを飲んでいたので、テイスティングに関しては、比較的早い段階から対策していました。
一人で行うときは、何種類かのワインを買ってきて比較テイスティングを行います。
違う品種の飲み比べの時もあれば、同じ品種で地域が違うワインを買ってくるなど、なるべく色んなワインの香りと味わいを感じることで、試験に出た時にすぐ答えられるよう準備しました。
グラスについては、試験本番と同じテイスティンググラスで。
5,6脚あるとかなり便利です。甘口ワインや酒精強化ワイン飲む時などにも使えますよ!
品種の特性を知りたい!と言うことであれば、フィラディスのビコーズワインがおすすめです。
ビコーズワインは、産地と品種の特徴が顕著にあらわれるブドウを原料としているので、ぶどう品種の特徴をより分かりやすく捉えることができます。
地域比較の飲み比べもできるので、試験対策ワインとして友人にもおすすめしています。
あと、一人でテイスティングする時に、1度に何本も開けられないという悩みもあると思います。
それを解決してくれるのが、ヴィノテラスのオンライン講座。
オーストラリア特集、ピノノワール特集など色々テーマがあるのですが、なんといっても小瓶でワインを送ってくれるのが嬉しい!
スクールの講義の復習にもなりますし、講座はアーカイブでも後日繰り返し見ることができるので、Diploma生でも結構利用している方が多いですよ!
私もちょくちょく利用しています!
テイスティング試験は、いかに色々なワインを飲んで味わいを捉えられるかが合否にかかっていると思います。
予算上安いワインが多くなりがちなのですが、5,000円くらいのワインも出ることがあります。
第3アロマの熟成香や品種特有の香りを嗅ぎ分けられるかも重要なポイントです。
ぶどう品種でいうと、シャルドネやピノノワールなど、メジャー品種に偏りがちですが、テキストのSpecificationに出てくる推奨品種は一通り飲んでおくことをオススメします。
私の時は赤ワインにガメイが出てきたのですが、普段全然飲まないので試験中かなり動揺しました(そして回答も結構外した記憶があります)。
番外編:Youtubeや海外のオンライン講座の活用
私は現在Diplomaを勉強しているのですが、Level3の時に知っていたら活用していたという参考Youtubeやオンライン講座を紹介します。
一つはWine with JimmyというWSET受験生向けのYoutubeです。
ロンドン在住のJimmyというWSETの講師が配信しているコンテンツで、Level2からLevel4までレベル別に動画を見られます。
この動画が分かりやすい!授業の復習にもなるので、DIplomaでかなりお世話になっています。
また、Napa Valley Wine Schoolからは、Level 3 WSET Exam Theory Skills & Drillsが販売されているので、模擬試験として解いてみるのも良いと思います。
私はDIploma試験対策としてD2とD5の模擬試験を購入して解いていましたが、記述の書き方や、どの程度書くとPass以上を取れるかなど参考になり役立ちました。
WSET Level3の試験の感想と反省点
Level3は約2ヶ月ほど、一日数時間勉強しました。
かなり自信を持って挑んだものの、当日は筆記試験の時間が足りませんでした。
また、中には苦手としていた内容が出題されていて、勉強不足を痛感しました。
筆記試験の感想
筆記試験は記述問題4問(配点各25点)とありますが、4問しか出ないと言うわけではありません。
各問題の中にさらに細かく問題が出題されていると言えば良いのでしょうか。
結論、12,3問くらい解きました。
また、青山先生からは、分からない問題も必ず何か書くように!と酸っぱく言われていたので、分からないなりに答えを捻り出しました。
と言うのも、間違っていても失点にはならないのです。
書いたことが1点に繋がるかもしれないので、分からなくても書くことを意識してみてください。
テイスティング試験の感想
テイスティングは赤ワインを大きく外しました。
実はWSETの場合、ワインが足りなくなったら試験中に追加することができます。
結論としては、最初の答えがあっていたものの、途中でテイスティングし直して答えを書き換えてしまいました。
時間が余るとついつい確かめたくなってしまうのですが、迷いにも繋がるんだなぁと反省しました。
WSET Level3の勉強法まとめ
本記事では、WSET Level3の勉強法についてご紹介しました。
Level3の合否を大きく左右するのは筆記試験です。
2、3日で何とかなる内容では決してないので、数ヶ月前から計画的に勉強と復習をすることをおすすめします!
もし困ったことなどあれば、インスタグラムのDMからご相談ください。