辛口と甘口でそれぞれ作り方が異なるシェリー酒。さまざまなスタイルを楽しめるシェリー酒ですが、今回は味わいのスタイルについて解説します!
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シェリー酒のスタイル
では、上記ぶどう3種から作られるシェリー酒にはどのようなスタイルがあるのでしょうか。シェリー酒には大きく分けて3つのスタイルがあります。
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1辛口(残糖5g/L未満)
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2中間の甘さ
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3甘口
辛口
フィノ
クリアな味わいの辛口シェリー酒です。スペイン語の「フィノ」とは英語の「fine」と同義語で、上品・上質という意味を持ちます。
フィノは、フロールの膜の下で熟成の全過程を経たものでなければならず、色は淡いレモン色で、口当たりはドライでライトからミディアムボディ、酸味は少なく、アルコール度数は15~17%。
ソレラでの熟成期間によっても異なりますが、パンデゥミ、アーモンド、青リンゴなどの風味が特徴です。熟成年数は3−7年程度ですが、平均すると5年くらいは熟成させます。スティルワインと同じく若いフィノと熟成させたフィノの味わいは全く異なります。
よってワインの品質も良いものから非常に素晴らしいものまで幅広く、価格も安価なものからスーパープレミアムまであります。
マンサニーリャ
マンサニーニャもフィノと同様の特徴を持ちますが、フィノとの違いは「地理的環境によるフロールの違い」です。熟成地のサンルーカルは大西洋に近く、また海洋性気候でもあるため、一年を通して湿度が高く気温が低いのです。そのような特徴的な気候条件で作られるシェリー酒であることから、サンルーカル・デ・バラメーダという独自の原産地呼称を持ちます。アルコール度数はフィノと同じく15-17%、香りの特徴としてカモミールやトーストのような香りがします。ソムリエ教本などをみると「塩気を感じる」という表現がよくありますが、実際は全てのマンサニーリャで塩気を感じるわけではありません。
また、マンサニーリャには熟成期間の長い、マンサニーリャ・パサダがあり、1年間新樽を使用せずに自然に熟成させることができます。このワインはその後、マンサニージャ・パサダ・ソレラシステムに入ります。このワインは、マンサニーリャのワインよりも平均して2、3年古く、それ以上になるとアモンティリャードのようになってくるのが特徴です。
ポイント
アモンティリャード
アモンティリャードは、フロールのもとで熟成した後に酸化熟成したタイプのシェリー酒です。造り方としては、フィノのソレラシステムで始まり、その後フロールを殺すためにアルコール度数17%で再発酵させます。そして、アモンティリャードのソレラシステムで酸化熟成させます。熟成年数は約7-15年ほど。安価なアモンティリャードは、生物学的に熟成された若いワインを使用することが多く、例えば、フィノのソレラシステムで最も若いクリアデラの1つから取り出されたワインを、アモンティリャードのソレラシステムにブレンドして短期間熟成させます。一方で、高価なワインほど熟成期間が長くなり、より複雑な味わいになります。アモンティリャドスの品質は、良質なものから卓越したものまで様々で、価格は中価格帯からプレミアム、さらにはスーパープレミアムまであります。アルコール度数は16-22%、外観は琥珀色をしており、シャープな辛口で複雑味があります。
パロ・コルタド
アモンティリャードの繊細なブーケとオロロソのボディーと味わいを持つワインです。一本線(パロ)で表示されるフィノの状態が途中でカット(コルタド)ことから、パロ・コルタドとも言います。一般的な造り方としては、フィノのソレラシステムで何年か経過したワインを、パロ・コルタドのソレラシステムに移行させます。パロ・コルタドに選ばれるワインは、一般的に第2級格付けのフィノの中でもより複雑さがあり、アモンティリャードよりも生物学的な熟成期間が短いため、ビター・オレンジのような柑橘系の香りと乳酸系の風味が感じられます。パロ・コルタドは、多くがプレミアム価格で、昨今は非常に優れたワインとしてより注目を集めています。
オロロソ
オロロソとは「香り」や「匂い」を意味する「オロール」という言葉からきており、香り高いといった意味を持ちます。酸化熟成タイプで、発酵後フロールの発生を止めるためにアルコール度数を17%にしています。色は赤褐色から茶色で、トフィーやクルミなどの第三アロマが特徴的です。熟成したオロロソは、他と同様プレミアム価格で販売されています。
ちなみに
中間の甘さ
乾燥・発酵させたパロミノを酒精強化して熟成させたのちに甘味成分を使って甘くすると、甘いシェリー酒を造ることができます。安いシェリー酒は比較的若いワインをボトリング直前に甘くして作られることが多い一方で、中価格帯以上のものは甘くしたワインをさらに独自のソレラシステムで熟成させることがあります。例えば、ゴンザレス・バイアスのマチュサレムVORSクリームシェリー酒は、辛口シェリー酒と甘口シェリー酒(すでに15年熟成)をブレンドした後、ソレラシステムで15年熟成させます。
ペールクリーム
ペールクリームは、下記の「クリーム」に対抗して造られたシェリーベースのモダンな甘口シェリー酒です。アルコール度数は15.5-22%、残糖は45-115g/Lで、甘味をつける前に生物学的な熟成期間を経ていなければなりません。一般的にはRCGM(濃縮ブドウ果汁)が甘味料として使用され、ワインに色や独自の風味を加えないようになっています。非常に繊細な香りの特徴を持つことが多いですが、長く熟成させないことが多いので、甘味料がフローラルな特徴を薄めてしまう傾向も。甘さのレベルは中甘口から甘口のものが多く、デザートワインとして飲まれています。
ミディアム&クリーム
ミディアムタイプのワインは、生物学的熟成と酸化的熟成の両方の特徴を兼ねていなければならず、一方のクリームタイプは酸化的な特徴のみを持ちます。これらのワインには通常、甘味料としてPXがブレンドされます。ミディアム・シェリー酒は、残糖が5-115g/Lと、オフ・ドライから甘口まで様々なタイプがありますが、クリーム・シェリー酒は通常、残糖が115-140g/Lとかなり甘口です。これらのワインは、価格的には安価なものから高級なものまで、品質的も良いレベルのものから素晴らしい品質のものまで様々です。シェリー酒の辛口スタイルと同様に、安いものは若いワインから作られる傾向にありますが、プレミアムワインになってくると、十分に熟成したアモンティリャード、オロロソ、PXワインの比率が高くなります。食後や寝酒に飲まれることが多いタイプのシェリーです。
ごく甘口
モスカテル
アルコール度数が15-22%、残糖は160g/L以上ですが、実際には325~375g/Lの残糖があることが多いです。加熱もしくは天日干ししたぶどうを85%使用する必要があります。粘度が高く、レーズンやプルーンのような香りがあります。
ペドロ・ヒメネス
アルコール度数が15-22%。モスカテル同様、残糖は212g/L以上が必要ですが、実際の残糖は450~550g/Lと非常に甘いのが特徴です。このワインは酸素から保護して非酸化的なスタイルにするか、数年間樽で熟成させて酸化的なスタイルにするかのいずれかで作られます。鉄分が多いので、貧血気味の方にもおすすめと聞いたことがあります。また、牛乳と割るとカルーアミルクのようなカクテルとしてもいただけます。
PXとモスカテルのワインは、価格的には安価なものから高級なものまで、品質的も良質なものから素晴らしく卓越したものまで様々です。