ひとえに甘口ワインといっても色々ありますが、その中でも代表的なのが「貴腐ワイン」と「アイスワイン」です。
どちらも一度飲むと、決して忘れることのできない味わいが特徴ですが、同じ甘口ワインでも産地や製造方法、味わい(価格)が違います。
というわけで、今回は貴腐ワインとアイスワインの違いやおすすめの飲み方をご紹介します。
後半では飲むシーンに合わせたおすすめワインを4本紹介しますよ!
貴腐ワインとアイスワインの違いは作り方と品種にある!
甘口ワインの作り方には大きく分けて3つあります。
- 甘味成分を添加する方法
- 樹上でぶどうを乾燥させる方法
- 収穫後にぶどうを乾燥させる方法
貴腐ワインは貴腐菌によって、アイスワインは樹上でぶどうを凍らせることによってワインを作ります。
それぞれ詳しくみていきましょう!
貴腐ワインは貴腐菌に感染したぶどうから作る甘口デザートワイン
貴腐ワインは、特定の条件下のみぶどうに発生する貴腐菌によって作られる甘口デザートワインです。
フランスのソーテルヌ、ハンガリーのトカイ、ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼが、世界三大貴腐ワインと呼ばれています。
貴腐ワインの作り方
貴腐ワインは次のステップで作られます。
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1貴腐菌の感染
貴腐菌は、特定の気象条件下でブドウに感染します。貴腐菌の発生には次の条件が必要です。
- 腐敗が起こる前にぶどうが完熟していること
- 朝は湿気があり霧が立ち込めていて午後は乾燥していること(午前中湿った状態により腐敗が起こりやすくなる)
- 午後に晴れて暖かい状態であること
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2水分の蒸発と糖分の濃縮
前述した晴れて暖かい状態により腐敗の発達が遅れ、ぶどうから水分が蒸発し、酸と風味と糖分が凝縮されます。
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3手摘みによる収穫
貴腐は均一に広がるわけではないので、これらの地域では基本的に収穫時は機械ではなく一房一房手作業で行います。
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4アルコール発酵・熟成
収穫したぶどうを圧搾して果汁を抽出、アルコール発酵と熟成をします。
貴腐ワインの主なブドウ品種は「セミヨン」と「ソーヴィニヨン・ブラン」
貴腐ワインは主にセミヨンという白ぶどう品種にソーヴィニヨン・ブランをブレンドして作られます。
セミヨンはボルドー地方が発祥の品種で、果皮が薄いので貴腐菌が発生しやすいのですが、酸味が少ないのが特徴。
そのため、酸味が強くフレッシュな柑橘系のアロマやハーブの香りを持つソーヴィニヨン・ブランをブレンドすることで、酸味と甘味のバランスを調整しているんです!
その他ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼにはリースリングが、ハンガリーのトカイワインには、フルミント、ハーシュレヴェリュー、サルガ・ムシュコタイとその国を代表するぶどうが使われています。
貴腐ワインは「一度飲むと忘れられない」高貴な味わい
貴腐ワインは、蜂蜜やアプリコット、ナッツ、スパイスなどの複雑な風味が特徴です。
熟成期間が長くなるにつれて、外観はゴールドに、味わいも南国系のドライフルーツの要素が強くなります。
また、独特の甘さと酸味のバランスが良く、長期熟成のポテンシャルを持ったワインが多いです。
貴腐ワインの価格は安くて数千円から
貴腐ワインの価格は最低でも数千円から。
世界的に有名なシャトー・デュケムなど、高いものだと10万円近くするものも。
理由はいくつかありますが、一つは貴腐の発生に理想的な条件が毎年揃うわけではないから。
さらにぶどうは水分が蒸発することで通常のワインよりも作れる量が少なくなってしまうんです。
また、手摘みによる収穫など人件費がかかることも価格に影響しています。
アイスワインは凍ったぶどうから作る甘口ワイン
次にアイスワインの作り方について見ていきましょう。
アイスワインは、樹上で凍った状態のぶどうから作られる甘口のデザートワインで特にカナダやドイツで有名です。
お土産としていただいたことも何度かありました!
アイスワインの作り方
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1樹上で凍らせる
健康なぶどうの果実を冬まで樹上に残しておきます。
気温が0℃以下になるとぶどうが凍ります。
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2手摘みで収穫
夜間または早朝に手作業で収穫され、すぐに圧搾されます。そうすることで凍った部分が圧搾機に残り、できる果汁の糖分含有率が高まります。
収穫したぶどうをワイナリーで凍らせて、人工的に同様の効果を生み出すことも可能です
アイスワインには「ヴィダル」というぶどう品種が使われる
アイスワインにはヴィダルというカナダを代表する白ぶどうが使われます。
成熟がゆっくりで果皮が厚いので、甘口ワインに適しています。
また、貴腐がないので、果実の純度が高いのも特徴です。
一方で、長期熟成型のぶどう品種ではないとも言われています。
アイスワインの味わいは「貴腐ワインよりもより重厚感」を感じる
アイスワインはリンゴ、洋梨、トロピカルフルーツ、ハチミツなどの芳醇なアロマが特徴です。
トロッとしたテクスチャーで重厚感があります。
アイスワインの価格もハーフサイズで数千円から
アイスワインも貴腐ワインと同様、安いワインのハーフサイズ(375ml)で数千円から、高いものだと1万円以上します。
特にドイツであればモーゼルやラインガウ地域が高品質なアイスワインを生み出すとして有名です。また、カナダのアイスワインも品質が高く評価されています。
貴腐ワインとアイスワインの美味しい飲み方
貴腐ワインとアイスワインは甘口スタイルということもあり、食後(デザート)に飲まれることの多いワインです。
でも実は食事との相性も良いんですよ!
というわけで、飲みきれないときにも活用できるおすすめの飲み方を4つご紹介します。
- 冷やして飲む
- 食事と一緒に食べる
- デザートと一緒に食べる
冷やして飲む
まずはシンプルにアイスワインだけで飲む方法。
どちらも冷やして飲むのがおすすめです。
貴腐ワインは8~12℃程度、アイスワインは10-12℃程度に冷やして飲むのが一般的です。
食事と一緒に飲む
貴腐ワイン・アイスワインはどちらもコクと甘味の影響でボリューム感を味わうことができるワインです。
そのため、比較的濃い料理にも合わせやすいのが特徴です。
- チーズ:マイルドなチーズだとアイスワインの甘みと複雑な酸味の前では消えてしまう傾向があるので、ロックフォールやゴルゴンゾーラのようなブルーチーズがおすすめです
- タイ料理やインド料理といったスパイシーな食べ物:口の中を冷やしてくれる効果もあり
- ボリューミーな料理:フォラグラや鴨肉といったボリューミーな料理を引き立ててくれる
デザートと一緒に食べる
貴腐ワインとアイスワインは、フルーツタルトやクリームブリュレ、チーズケーキといった甘いデザートとの相性が良いと言われています。
ですが、ぜひ試していただきたいのは、バニラアイスにかけていただく食べ方です。
とっても贅沢な食べ方ですが、極上の気分を味わえるので飲みきれない時などにぜひ試してください。
貴腐ワインとアイスワインには狭口のグラスがあると便利
貴腐ワインやアイスワインは、香りを楽しむために狭口のグラスで飲むのがおすすめです。
本来デザートワイン用グラスやポートワイン用グラスが適していますが、わざわざグラスを買う必要はありません!
我が家で貴腐ワインを飲む時はテイスティンググラスや小さなグラス、あとは木村硝子のトラベラーグラスで代用しています。
ちなみに、木村硝子のグラスは安くて質が高いので数種類持っておくと便利ですよ!
特にトラベラーグラスと同じタイプのピッコロは泡白赤どれでも使い回せるタイプで、持っている方も多いグラスです!
保存方法
貴腐ワインとアイスワインの抜栓後は基本的に早めに飲み切るのが理想的です。
特にアイスワインは酸化しやすいため、開封後は3-5日を目安にできるだけ早く楽しむことが重要です。
開栓後は冷蔵庫やワインセラーで保管し、貴腐ワインも保存期間は2週間程度を目安にしてください。
鮮度を落とさず飲みたい方には、フルボトルではなくハーフボトルの購入がおすすめです!
おすすめ貴腐ワインとアイスワインを紹介!
貴腐ワインとアイスワインを比較した場合、レストランやワインショップで提供している種類は貴腐ワインの方が豊富な印象があります。
やはり日本最大級だけあって
エノテカ
シャトーディケム | レゼルヴ・ムートン・カデ・ソーテルヌ | カルム・ド・リューセック | イニスキリン アイスワイン・ゴールド・ヴィダル | |
ボトル | ||||
品種 | セミヨン ソーヴィニヨン・ブラン | セミヨン ソーヴィニヨン・ブラン ミュスカデル | セミヨン ソーヴィニヨン・ブラン | ヴィダル |
産地 | フランス | フランス | フランス | カナダ |
飲むシーン | 特別な日に/熟成用に | デイリーワインに | デイリーワイン、ホームパーティに | 特別な日に |
【貴腐ワイン】シャトーディケム
貴腐ワインという言葉とセットで知っておいた方が良いワインがあります。それが「シャトー・ディケム」です。
貴腐ワインの最高峰とも言えるワインで、なんとお値段は一本10万以上!
デイリーワインにはおすすめできませんが・・・
機会があれば確実に飲んでおきたいワインの一つです。
私も一度だけ飲んだことがありませんが、シャトー・ディケムを飲んでしまうと他の貴腐ワインは飲めなくなりそう。
イベントでたった一口しか飲めなかったのですが、甘く深い余韻とともに気持ちが飛んでしまいそうになりました。
正直フルボトルを開けるのは大勢で飲まないと難しいと思います。ハーフサイズなら5万円程度で買えますので(とはいえど高いですけどね・・・)、記念として買うのはアリかなと思います。
シャトー・ディケムは100年でも熟成できると言われているので、例えば子どもの成人の時に開けたいなんていう目的で買うのもありですよ!
【貴腐ワイン】レゼルヴ・ムートン・カデ・ソーテルヌ
3,000円前後で購入するなら、レゼルヴ・ムートン・カデ・ソーテルヌを。
5大シャトーのシャトー・ムートン・ロスチャイルドが手がける、デイリーワインシリーズの一つです。
家で甘口ワイン飲みたいなぁと思う時に時々購入します。
南国フルーツのアロマにキャンディを加えたような甘さで、ボリューム感もありますが、奥深さや余韻はそこまでありません。
でも3,000円で飲むには十分、今すぐ飲んで美味しいワインです!
疲れた日や寝る前に飲むともう最高に美味しいですよ!
私はブルーチーズやアイスにかけてちびちび食べるのが好きです!
【貴腐ワイン】カルム・ド・リューセック
もう少し値段が出せるという方には、リューセックのセカンドワイン、「カルム・ド・リューセック」を 飲んでみてください。
シャトーリューセックは、シャトー・ディケムの東側に位置する、格付け第一級のシャトーなのですが、バロン・ド・ロスチャイルドが所有するだけあって、やはり味わいも素晴らしいです。
ちょっと美味しい甘口ワインを飲むなら5,000-10,000円くらいの予算で購入したいというのが個人的な考え。
甘口ワインは一度にたくさん飲めるわけではないので、それ以上出すなら赤ワインやシャンパンを飲みたいという気持ちになってしまうんですよね。
なので、カルム・ド・リューセックは品質と価格のバランスが絶妙だと思っています。
最近ボトルのエチケットもリニューアルされたんですよ!
【アイスワイン】イニスキリン アイスワイン・ゴールド・ヴィダル
フランスのボルドーで開催された、国際ワイン・スピリッツ見本市で最高栄誉賞受賞のワイナリーが作るアイスワインです。
アイスワインはハーフボトルかつ縦長スタイルなのが特徴です。
マンゴやオレンジを中心としたトロピカルフルーツのアロマや、ピーチ、ネクタリン、レモンの味わいと爽やかな酸味とのバランスが秀逸です。
貴腐ワインとアイスワインについてよくある質問
貴腐ワインとアイスワインについてよくある質問に答えます。
アイスワインと貴腐ワインどちらの方が酸味がありますか?
どちらもあります!
貴腐ワインとアイスワインそれぞれ口に含んだ時に唾液が広がると思います。
ちなみにシャトーディケムは酸がかなり高いです。だから飲んだ後に口の中がだらっとした甘さが広がらない、イメージとしてはそんな感じでしょうか。
安いものだと多少酸が弱いワインもあるかもしれません。
そもそもなぜ貴腐ワインとアイスワインは酸味が高いの?
貴腐ワインが酸味が高い理由は、主にその製造過程にあります。
貴腐ワインは、貴腐菌に感染した状態で作られます。このカビはブドウの皮を薄くし、水分が蒸発しやすくなるため、ブドウの中の糖分や他の成分が濃縮されます。
この過程で、ブドウの酸も濃縮されるため、最終的には糖分が高いにもかかわらず、酸味も強いワインができるのです!
酸味はワインの新鮮さを保つだけじゃなく、長期熟成にも適しているんです!
パッシートとは何が違いますか?
パッシートも同じ甘口タイプのワインですが、パッシーとはぶどうを陰干しして糖度を濃縮方法でワインを作ります。
また、モスカートやマルヴァジーアといったアロマティックなぶどう品種が使われます。
貴腐ワインとアイスワインの違いのまとめ
本記事では、甘口の貴腐ワインとアイスワインの違いについて、味わいや特徴、おすすめの飲み方を紹介しました!
決して安いワインではないものの、一度飲むと病みつきになる。貴腐ワインやアイスワインにはそんな魅力があります。
ぜひこの機会にそれぞれ試してみてください!
貴腐ワイン&アイスワインを買うならエノテカがおすすめ