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シャンパンメゾンも進出!「イングリッシュ・スパークリングワイン」とは

ピノ

WSET Level2,3取得|WSET Diploma勉強中|一児の母、夫婦で1日ボトル2本は空けるほどワイン好き|年間300日以上飲んでます|毎日の食卓と時間がより楽しく豊かになるようなワインと、WSETやソムリエ試験で使えるネタを紹介しています。

ワイン好きの間で関心の高くなっているイギリスワイン。
実際に、2017年からはソムリエ・エキスパート試験でも出題されるようになりました。
イギリスワインの生産の中で多くを占めるのが、スパークリングワインです。今回は、なぜイングリッシュスパークリングワインが注目されているのか、その背景と今後について解説します。

イングリッシュ・スパークリングワインの品質が向上した背景

イギリスは、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの四カ国で構成されています。多くの地域において30-50°の緯度の間でワインが造られるなか、イギリスの緯度が49-61°と高く、冷涼な気候なんです。そのため昔はドイツ交配品種やハイブリッド品種によるライトボディでフルーティなワインが造られていました。
そのような環境の中で、なぜイングリッシュ・スパークリングワインが注目されるようになったのか。そこには品質向上に大きく関わる大きな理由があります。

その1.気候変動

主たる要因となっているのが気候変動です。前述のように、本来であればイギリスはワイン産地としては非常に緯度が高いのですが、気候変動によりワインを造れる環境が整ってきました。
実際に1980年代になると、温暖化の影響で徐々にぶどうの熟度が上がりはじめるようになります。多くのワインが造られるイギリス南部において、1900年代は年間平均気温が10°を超える地域はわずかしか存在しませんでした。その後、2000年に入るとイギリス南部の大半で10°を超えるようになり、2080年にはイギリスのほぼ全土に拡大すると言われています。また、2040年までには、気候変動の影響でイギリスは現在よりもワインに適した「中間気候」のワイン産地になっている可能性があるとも言われています。

その2.暖流の影響

2つ目の理由が、メキシコ湾から大西洋を横切る「メキシコ湾流」です。メキシコ湾流は暖流のため、ぶどう畑に暖かさをもたらしてくれます。
このような理由により、イギリスは「40年前のシャンパーニュの気候とほぼ同じ」と言われるほどワイン造りに適した環境になりました。
また、シャンパーニュ地方と同じ石灰質土壌をもつこともスパークリングワインに適した環境と言えるでしょう。

WINE INDUSTRY OF GREAT BRITAIN 2021:
LATEST FIGURESより。栽培面積も拡大していることがわかる。

シャンパーニュメゾンもイングリッシュ・スパークリングに注目する理由

このような理由から、イングリッシュ・スパークリングの可能性に注目しているのがフランスのシャンパーニュのメゾンです。
大手有名シャンパーニュメゾンのテタンジェは、シャンパーニュメゾンとしては初めてケント州でスパークリングワインの生産をすることを発表しました。
その後、ポメリーも生産に乗り出し、ルイ・ロデレールデュヴァル・ルロワも生産に興味を示しています。シャンパーニュメゾンがイギリス進出している背景の一つには、先程述べた気候変動が大きく関係しています。やはりシャンパーニュも気候変動により恩恵を受けた地域の一つです。実際に良い年しか造られないと言われているヴィンテージ・シャンパーニュの生産年は近年増えてきています。一方で、2040年にイギリスが「中間気候」になる可能性があるように、より緯度の低いシャンパーニュも気候変動による影響に今まで以上に対応しなければならなくなります。現在の土地での栽培対策とは別に、新たな土地を開拓することは非常に重要なのです。

製法はシャンパーニュと同じ瓶内二次発酵

さて、このような背景のあるイングリッシュスパークリングワインですが、多くがシャンパーニュと同じ製法の瓶内二次発酵で造られています。
その理由は、アルコール発酵を2回行うにあたり、果汁の糖度が低いワインが好まれるからです。気候変動により果汁糖度が高くなっているといっても、まだまだベースワインは他の地域と比べて低めです。さらにイングリッシュ・スパークリングワインが造られている南部の地域ではシャンパーニュと同じ白亜質土壌であることも、理由として挙げられるでしょう。

押さえるべき生産者トップ3

ではイングリッシュ・スパークリングワインの代表的な生産者をご紹介しましょう!

イングリッシュワインの先駆者:ナインティンバー


イギリスでシャルドネ、ピノ・ノワール、ピノムニエの3種だけで瓶内二次発酵のスパークリングワインを成功させた生産者。1992年にブラン・ド・ブランが発売され以降、イギリス王室でも振る舞われているイギリスを代表するスパークリングワインの生産者です。前述したシャルドネとピノ・ノワール、ピノムニエの苗木はシャンパーニュから主にシャンパーニュから取り寄せているという徹底ぶり。2009年には世界で約2400本くらいしか生産していないというプレステージキュベもリリースしました。(バイヤーさんから直接聞いて、思わず私も購入してしまいました。)
フレッシュな酸味に加え、青リンゴやレモン、トースト、ビスケットといった様々なアロマが際立ちます。サーモンのマリネ、カルパッチョなどにも合います。

イギリス最古の商業的なワイナリー:ハンブルドン


クリケット発祥の地と言われているハンプシャー州にあるハンブルドン村。イギリスで初めて商業的価値を持ったブドウ畑が出来た場所でも有名です。
リンゴや白い花、蜂蜜、柑橘類などの上品な香りとミネラル感が印象的なスパークリングワイン。初夏の乾杯のひとときや、シャンパーニュ好きに薦めたい一本です。

エリザベス女王のお膝元で造るスパークリング:ウィンザー



ウィンザー城で、英国王室のために誕生したイングリッシュ・スパークリングワイン。ウィンザー城とバッキンガム宮殿での公式行事やプライベートで用いられています。
杏、アプリコット、白桃のような丸みを帯びたボディと爽やかな酸がきめ細かな泡とともに口に広がり、華やかな味わいを楽しめます。ハンブルトンと比べるとややライトな印象です。王室で用いられるワインが飲めるなんて、それだけで特別な気分になれますよね!

これからますます目にする機会が増えるであろうイングリッシュ・スパークリングワイン。
話のネタとしてスパークリング好きには是非飲んでいただきたいです。

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